千住博せんじゅひろし

時代 1958年生(昭和33)
カテゴリー 掛け軸,絵画、書画
作品種別 日本画家
プロフィール 東京都出身。

千住 博(せんじゅ ひろし)氏は、1958年1月7日に東京都杉並区で生まれた日本画家です。幼少期から慶應義塾の教育を受け、1978年に東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻に入学し、1982年に卒業、1984年に同大学院修士課程を修了しました。
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彼の作品は、壮大なスケールの滝や崖を主題とし、抽象表現主義と日本の伝統的な絵画技法を融合させた独特のスタイルで知られています。1995年の第46回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、東洋人として初めて絵画部門で名誉賞を受賞し、国際的な評価を得ました。
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その後も、国内外で多数の個展を開催し、作品はニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館など、世界の主要美術館に収蔵されています。また、2002年には大徳寺聚光院別院の襖絵を完成させ、2004年には東京国際空港第2旅客ターミナルのアートディレクションを担当するなど、公共空間での作品制作にも積極的に取り組んでいます。
ギャラリー萠

教育者としても活躍し、2007年から2013年まで京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の学長を務め、現在は同大学の教授を務めています。2021年には日本芸術院賞および恩賜賞を受賞し、同年に日本芸術院会員に任命されました。
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千住氏の作品は、自然の壮大さと静謐さを表現し、観る者に深い感動を与え続けています。その独特の画風と技法は、現代日本画の新たな可能性を示しています。

千住博の代表作の一つである「ウォーターフォール(水の滝)」シリーズは、彼の最も象徴的な作品群として知られています。このシリーズは、自然の持つ神秘性や力強さを、伝統的な日本画の技法と現代的な表現を融合させて描いたもので、特に光と水の表現に優れています。岩肌を流れ落ちる滝の描写は、墨と顔料を用いた独自の技法によってリアルかつ幻想的に仕上げられています。

国際的な評価と展示
千住博の作品は、世界各国の美術館やギャラリーで展示されており、特にアメリカやヨーロッパでの評価が高いです。彼の作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、大英博物館などの著名な美術館に収蔵されており、日本国内でも東京国立近代美術館、京都国立近代美術館などにコレクションされています。

また、2011年には東日本大震災の復興支援のために「ウォーターフォール」シリーズを提供し、その収益を寄付するなど、社会貢献活動にも積極的に関わっています。

近年の活動
近年では、建築や空間デザインにも関わるプロジェクトが増えており、ホテルや商業施設のインテリアに作品を提供することもあります。たとえば、2015年にはニューヨークのザ・ペニンシュラホテルのロビーに大型のウォーターフォール作品を設置し、その壮大なスケールと美しさが話題となりました。

また、2019年には長野県軽井沢の「千住博美術館」が開館し、彼の代表作を常設展示する美術館として、多くの訪問者を魅了しています。

作風の特徴と影響
千住博の作品には、西洋美術の抽象表現主義と、日本画の伝統技法が融合されており、特に滝の作品に見られる大胆な構図と繊細な筆致が特徴的です。また、自然の持つ神秘的な要素を強調するために、作品の中に余白(空間)を多く残すことも多く、これが日本的な「間(ま)」の美学を感じさせる要素となっています。

彼の作風は、近代日本画の伝統を継承しつつも、現代的な視点で解釈されており、国内外の若手アーティストにも多大な影響を与えています。

受賞歴と栄誉
千住博は、これまでに数多くの賞を受賞しています。

1995年:ヴェネツィア・ビエンナーレ 名誉賞
2017年:フランス・レジオン・ドヌール勲章(芸術分野)
2021年:日本芸術院賞・恩賜賞
2021年:日本芸術院会員に選出
また、日本国内では文化勲章の候補としても名前が挙がることが多く、今後さらに評価が高まる可能性があります。

まとめ
千住博は、現代日本画の第一人者として、国内外で高い評価を受けるアーティストです。彼の作品は、伝統的な技法と現代的なアプローチを融合させた独自のスタイルを持ち、特に「ウォーターフォール」シリーズをはじめとする自然の壮大な表現が特徴です。また、教育者や文化貢献者としても幅広い活動を展開し、後進の育成や社会貢献にも力を注いでいます。

今後も、彼の新たなプロジェクトや展覧会に注目が集まり続けることでしょう。

千住博の作品の技法と表現
千住博の作品は、日本画の伝統的な技法を活かしながら、現代的な表現を取り入れた独自のスタイルを確立しています。彼は主に、岩絵具や墨を使用し、紙や絹ではなく、キャンバスやパネルに描くことが多いのが特徴です。

特に滝をモチーフとした作品では、「にじみ」や「ぼかし」の技法を巧みに使い、水の流れや光の効果をリアルに再現しています。また、通常の日本画に比べて大きなスケールの作品を多く手がけることで、観る者に圧倒的な没入感を与えます。

彼の作品は単なる風景画ではなく、「精神的な空間」としての役割を果たしており、鑑賞者が静かに自然と対話できるような余白や静寂が意識されています。この「間(ま)」の概念は、伝統的な日本美学の一部として彼の作品に深く根付いています。

代表的なシリーズとその意味
千住博は、滝をモチーフにした「ウォーターフォール」シリーズ以外にも、さまざまな自然のテーマを扱った作品を制作しています。

1. ウォーターフォール(滝)シリーズ

千住博の代表作である「ウォーターフォール」シリーズは、壮大な滝の流れを描いた作品群です。彼は滝を「永遠の時間の流れ」として捉え、自然の力強さと静寂の両方を表現しています。このシリーズは1995年のヴェネツィア・ビエンナーレで高く評価され、彼の国際的な評価を確立するきっかけとなりました。

2. 断崖(Cliff)シリーズ

滝とは対照的に、断崖のシリーズでは大地の存在感と神秘性を表現しています。岩肌の細やかな質感や、断崖のもつ荘厳な雰囲気が特徴で、観る者に畏怖の念を抱かせるような力強さを感じさせます。

3. 夜の静寂(Silence of Night)シリーズ

このシリーズでは、深い夜の森や湖を描き、幻想的な雰囲気を醸し出しています。光と影のコントラストが際立ち、観る者を静寂の世界へと誘います。

4. 生命の樹(Tree of Life)シリーズ

生命の樹をテーマにした作品では、自然の生命力を讃え、生命の循環や宇宙の調和を表現しています。日本画特有の繊細な描写を活かしながら、より哲学的なメッセージが込められています。

公共空間での作品と建築プロジェクト
千住博は、美術館や公共空間のための作品も数多く制作しており、建築とアートの融合にも関心を持っています。彼の作品は、ホテルや企業のロビー、大型施設の装飾としても採用され、特にニューヨークやロンドン、東京などの都市空間で目にすることができます。

1. 軽井沢・千住博美術館

2011年に開館した「千住博美術館」は、彼の代表作を展示するために設立された美術館です。建築家・西沢立衛が設計し、ガラス張りの開放的な空間と自然光を活かした展示方法が特徴です。この美術館では、ウォーターフォールシリーズをはじめ、さまざまな千住作品を鑑賞できます。

2. 成田空港・壁画プロジェクト

成田国際空港の第一ターミナルには、千住博の作品「ウォーターフォール」が設置されています。空港を訪れる世界中の人々に、日本の美を伝える役割を果たしています。

3. 京都・大徳寺聚光院の襖絵

2002年に完成した大徳寺聚光院(じゅこういん)の襖絵は、千住博が手掛けた重要な作品の一つです。伝統的な襖絵に現代の感覚を取り入れた作品で、静寂と自然の調和を表現しています。

今後の展望と影響
千住博は、現在も精力的に作品を制作し続けており、新たなテーマにも挑戦しています。近年では、デジタル技術を活用した作品や、映像作品とのコラボレーションにも取り組んでいます。また、日本画の伝統を未来へと継承するために、若手アーティストの育成や芸術教育にも力を入れています。

彼の作品は、今後も世界中の展覧会やアートイベントで注目され続けるでしょう。そして、単なる風景画としてではなく、自然と人間の関係性を問い直す哲学的な視点を持つアートとして、多くの人々に影響を与え続けることが期待されます。

まとめ
千住博は、日本画の伝統を継承しつつも、新たな表現を追求する現代日本画の巨匠です。彼の作品は、滝や断崖、静寂の夜などの自然をモチーフにしながら、深い精神性と普遍的な美を表現しています。公共空間での作品制作や美術館の設立を通じて、広く芸術を普及させる活動も行い、今後もその影響力はさらに広がっていくでしょう。