柿下木冠かきしたぼっかん

時代 昭和15年〜
カテゴリー 絵画、書画
作品種別 現代書家・漢字作家
プロフィール 師 大抱
静岡県出身。

柿下木冠(かきした ぼっかん、本名:柿下康次、1940年生まれ)は、静岡県川根本町出身の書家であり、現代書道界において多大な影響を与えた人物です。2023年10月4日に83歳で逝去されました。

経歴と活動
柿下氏は19歳で山崎大抱氏に、21歳で手島右卿氏に師事し、書の道を歩み始めました。1972年には毎日書道展スペイン展の開会式でデモンストレーションを行い、1977年には米国ネブラスカ州オマハで個展を開催するなど、国内外で精力的に活動しました。また、1996年にはニューヨークのカーストアイアンギャラリーで個展を開催するなど、国際的な評価も高まりました。

彼の作品は、シカゴ美術館、ジョスリン美術館、静岡県立美術館、土門拳記念館などに収蔵されています。また、公益財団法人独立書人団常務理事、毎日書道展審査会員、抱一会理事長、一基会会長などの要職を務め、書道界の発展に尽力しました。

作風と理念
柿下氏の書は、古典に根ざしつつも現代的な感性を取り入れた造形書が特徴です。彼は「書が極まってくると、『平和』につながる」という師・手島右卿氏の言葉を胸に、書を通じて社会へのメッセージを発信しました。特に、ロシアのウクライナ侵攻に対しては、「自由」や「脅」などの文字を用いて、平和への願いを込めた作品を制作しました。

また、彼は音楽家とのコラボレーションにも積極的で、2005年にはニューヨークのザンケルホール・カーネギーやアトランタのエモリー大学で、音楽と書の融合を試みたパフォーマンスを行いました。これらの経験は、彼の書作に新たな表現の幅をもたらしました。


展覧会と顕彰
柿下氏は、1972年に「一基会」を発足させ、書道の普及と後進の育成に努めました。「一基会」という名称には、「物のはじめ」や「物の極」などを大切にし、これを基として書人としての生涯を全うするという願いが込められています。


彼の逝去後、2024年2月には静岡市葵区のギャラリーえざきで「追悼 柿下木冠 近作展 2024」が開催され、2025年4月には静岡県立美術館で遺作展が行われました。これらの展覧会では、「砦」や「立」などの代表作が紹介され、彼の書に込められたメッセージが多くの人々に伝えられました。


柿下木冠氏は、書を通じて平和や自由への願いを表現し、現代書道界において重要な役割を果たしました。その作品は、今なお多くの人々に感動を与え続けています。