山口重春やまぐちしげはる

時代	江戸時代
カテゴリー	掛け軸,絵画、書画
作品種別	浮世絵
プロフィール	**山口重春（やまぐち しげはる）**は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、特に大坂を拠点に活動しました。彼は主に役者絵や版本挿絵を手がけ、その作品は当時の演劇文化や風俗を色濃く反映しています。 基本情報 本名：山口甚次郎 生没年：享和2年（1802年）生、嘉永5年5月29日（1852年7月16日）没 出身地：肥前国長崎鍛冶町（現在の長崎県長崎市） 活動拠点：大坂（現・大阪市） 画号：柳斎重春、玉柳亭重春、烽山重春、日華重春など 師匠：明確な師匠は不明ですが、丸丈斎国広や柳川重信に学んだとも伝えられています。 来歴と画業 山口重春は、商家の次男として生まれ、幼少期に父とともに長崎から大坂へ移住しました。文政12年（1829年）から天保3年（1832年）にかけては、大坂の三津寺町に居住していた記録があります。彼の作画活動は文政4年（1821年）頃から確認されており、役者絵や版本挿絵、肉筆画など多岐にわたる作品を制作しました。 初期には「長崎国重」「梅丸斎国重」「瀧川国重」などの画号を使用し、文政9年（1826年）7月に「柳斎重春」と改名しました。また、天保元年（1830年）からは「玉柳亭」の号も用いています。彼の作品は、初期には江戸風の洗練された画風を持ち、後期には上方特有の濃密な画風へと変化しています。 代表作と特徴 版本挿絵 『月宵鄙物語』後編（文政11年、桃花園三千丸作） 『都鄙物語』（文政12年、手塚兎月作） 『傾城狭妻櫛』（文政13年） 『忠孝二見浦』（文政14年、南里亭其楽作） 『役者風俗三国志』（天保2年、花笠外史編） 『契情稚児淵』（天保3年） 『絵本和田軍記』（天保5年、速水春暁斎作） 『三傑奇譚』（天保12年、東籬亭作） 『扶桑皇統記図会』（嘉永2–3年、好華堂主人作） 錦絵（役者絵） 「まりがせ秋夜・中村歌右衛門」（文政4年、大坂角の芝居『太平記菊水之巻』より） 「石川五右衛門・歌右衛門」（文政9年、大坂中の芝居『木下蔭狭間合戦』より） 「自来也・中村歌右衛門」（天保3年、大坂角の芝居『柵自来也談』より） 「小野小町・梅花 僧正遍正、文屋康秀、在原業平、喜撰法師、大伴黒主・芝翫」（天保5年、大坂角の芝居『六歌仙容彩』より） これらの作品は、当時の歌舞伎役者の姿や舞台の一場面を生き生きと描写しており、演劇文化の記録としても貴重です。 肉筆画とその他の活動 山口重春は、肉筆画も手がけており、特に絵馬や美人画などが知られています。例えば、金刀比羅宮には彼が描いた「素尊斬蟒図」の絵馬が奉納されています。 また、彼は芝居の看板絵も制作しており、その美しい彩色と精緻な描写で評判を集めました。当時の大坂では、浮世絵師が副業として絵を描くことが一般的でしたが、重春は絵を専業とし、その技量の高さが窺えます。 門人と後継者 山口重春の門人には、柳狂亭重直や重房がいます。また、彼の長女である「よね」は「米春」と号し、父の画業を継ぎました。彼女の作品は、特に舶来人からも高く評価され、海外に持ち帰られることもあったと伝えられています。 現存作品と所蔵先 山口重春の作品は、以下の美術館や博物館に所蔵されています： ボストン美術館 早稲田大学演劇博物館 東京都立図書館 金刀比羅宮 これらの施設では、彼の錦絵や版本挿絵、肉筆画などを鑑賞することができます。 山口重春の作品は、江戸時代後期の大坂における演劇文化や風俗を知る上で貴重な資料となっています。彼の多彩な画業は、当時の人々の生活や娯楽を生き生きと伝えており、現在でも多くの人々に親しまれています。