田村水鷗たむらすいおう

時代 江戸時代
カテゴリー 掛け軸,絵画、書画
作品種別 浮世絵
プロフィール 田村 水鷗(たむら すいおう、生没年不詳)とは、江戸時代前期の浮世絵師。

​田村水鷗(たむら すいおう、生没年不詳)は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した浮世絵師で、特に肉筆美人画の名手として知られています。​その生涯や出自については不明な点が多く、江戸の人とも京都の人とも伝えられていますが、確かな記録は残っていません。​また、一説には女性絵師であった可能性も指摘されています 。​


画風と作風
田村水鷗の作品は、主に肉筆画で構成されており、版画作品は確認されていません。​その画風は、土佐派や住吉派の影響を受けた繊細で優美な筆致に加え、菱川師宣の写実的な美人画の要素も取り入れられています。​特に、衣装の線を単純化し、独自の表現法で醸し出す画品とスケールは他の追随を許さないと評されています 。​

また、作品には「節信」「観董」「无声詩」などの号が用いられ、これらの印章や落款から、制作時期や画風の変遷を読み取ることができます。​例えば、「节信」の印章がある作品は師宣風、「无声詩」の印章がある作品は土佐派の風が色濃いとされ、これはそれぞれの印章を使った時期が違うことによると考えられています 。​


代表作と所蔵美術館
田村水鷗の作品は、国内外の美術館や博物館に所蔵されています。​代表的な作品には以下のようなものがあります:​

「桜下縁先美人図」:​東京国立博物館所蔵。
「羽根つき図」:​東京国立博物館所蔵。
「小督と仲国図」:​浮世絵太田記念美術館所蔵。
「美人訪盧図」:​熊本県立美術館(今西コレクション)所蔵。
「紅梅美人図」:​大英博物館所蔵。
「桜下美人図」:​ボストン美術館所蔵。
「若衆と姫君図」:​クリーブランド美術館所蔵。
「美人楼上観景図」:個人蔵。​

これらの作品は、田村水鷗の卓越した技術と独自の美的感覚を示しており、特に美人画における表現力の高さが評価されています。​

評価と研究
田村水鷗は、長らく謎多き絵師とされてきましたが、近年ではその作品の芸術的価値が再評価されています。​1963年に発行された『季刊浮世絵』第7号では、金子孚水氏と吉田瑛二氏が田村水鷗について特集し、彼の作品が菱川師宣に影響を与えた可能性を指摘しています。​これは、従来の浮世絵史における位置づけを見直す重要な視点となっています 。​

また、田村水鷗の作品は、表具にも特徴があり、豪華な装飾が施されたものが多く見られます。​これは、当時の富裕層からの注文に応じて制作されたことを示しており、彼の作品が高い評価を受けていたことを物語っています。​

田村水鷗は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した浮世絵師であり、特に肉筆美人画の分野で高い評価を受けています。​その作品は、国内外の美術館や博物館に所蔵されており、現在でも多くの人々に鑑賞されています。​今後の研究によって、さらにその実像が明らかになることが期待されています。​