鳥居清広とりいきよひろ

時代 江戸時代
カテゴリー 掛け軸,絵画、書画
作品種別 浮世絵
プロフィール 鳥居 清広(とりい きよひろ、生没年不詳)とは、江戸時代初期の浮世絵師。

鳥居清広(とりい きよひろ)

概要

鳥居清広は、江戸時代中期(18世紀中頃)に活躍した浮世絵師です。
主に**役者絵(歌舞伎役者を描いた絵)**を得意とし、
鳥居派の流れを受け継いだ重要な絵師の一人です。

初代・鳥居清信(とりい きよのぶ)、二代目・鳥居清倍(とりい きよます)に続き、
鳥居派の伝統的な芝居絵(看板絵・番付絵)制作を支えた絵師であり、
舞台芸術と浮世絵文化をつなぐ存在として評価されています。

生涯

生年・没年
詳しい生年・没年は不詳です。
主な活動期は、**寛延〜宝暦年間(1748年〜1764年頃)**と推定されています。
師匠・継承関係
二代目鳥居清倍の弟子、あるいは子孫と推定されており、鳥居派内部で育てられたと考えられます。
活動拠点
主に江戸(日本橋、浅草界隈)で活動しました。
作風と特徴

1. 役者絵(芝居絵)の正統派
清広の作品は、歌舞伎役者の姿を力強く、かつ堂々と描く伝統的な鳥居派スタイルを継承しています。
舞台衣装を大きく広げた誇張表現と、舞台上の「見得(みえ)」を切る瞬間を捉える構成が特徴です。
2. 太くしっかりとした輪郭線
役者の体つきや衣装の輪郭を太い線で強調し、舞台の迫力を絵に写し取ろうとする意図が見られます。
3. 墨摺絵(すみずりえ)・紅摺絵(べにずりえ)
活動時期はまだ多色摺り(錦絵)以前のため、
墨一色の摺りに、紅や黄などを加える紅摺絵技法を多く用いました。
4. 正面性・様式性
正面を向いた大仰なポーズ、記号的に描かれる表情など、舞台芸術にふさわしい様式美を重視しています。
主な代表作

『市川団十郎の荒事役姿』
荒事(あらごと:勇壮な演技様式)を得意とする市川団十郎を描いた作品。
荒々しいポーズと豪華な衣装が力強く表現されています。
『芝居番付絵』
興行告知のために制作された芝居番付に、役者の扮装姿を描き込んだもの。
『役者立姿図』
単体の役者が舞台衣装で立つ姿を描いた紅摺絵作品。
鳥居派の中での位置づけ

清広は、鳥居清信・清倍に続き、鳥居派の正統な後継者とみなされます。
鳥居派は、歌舞伎芝居との密接な関係を持ち、芝居小屋の看板・番付などを制作していましたが、
清広もこうした伝統的役割をしっかり担っていました。
その後、鳥居清長(とりい きよなが)が登場し、役者絵をより洗練された細身・長身美人画風へ進化させますが、
清広の時代はまだ伝統的な力強い役者絵が主流でした。
歴史的意義

伝統役者絵スタイルの継承者
舞台芝居と浮世絵を結びつけた鳥居派の様式美を、清広は堅実に守り続けました。
芝居文化の視覚的記録者
江戸時代中期の歌舞伎芝居興行を、ビジュアルとして記録する重要な役割を果たしました。
鳥居派の後進育成への橋渡し
清広の後、鳥居清長のような新しい表現者が登場することで、
鳥居派はより多様な方向へ発展していきますが、その礎を築いた一人でもあります。
まとめ

江戸中期(18世紀半ば)に活躍した浮世絵師
鳥居清信・清倍に続く鳥居派の正統継承者
役者絵(芝居絵)を中心に制作
力強く堂々とした舞台芸術的表現が特徴
芝居文化と浮世絵文化の橋渡し的な存在