懐月堂度辰かいげつどうどしん

時代 江戸時代
カテゴリー 掛け軸,絵画、書画
作品種別 浮世絵
プロフィール 懐月堂 度辰(かいげつどう どしん、生没年不詳)とは、江戸時代初期の浮世絵師。名前に正式な読みは不明で、「度辰」は「のりたつ」とも読む。

懐月堂度辰(かいげつどう たくしん)について

概要

懐月堂度辰(生没年不詳)は、江戸時代中期の浮世絵師です。懐月堂派に属する絵師の一人で、特に美人画を得意としました。活動時期は18世紀初頭、元禄〜正徳期(1688年〜1716年頃)と推定されます。

懐月堂派は、初代の**懐月堂安度(かいげつどう あんど)**を祖とし、その門下絵師たち(度辰・度賀・度正など)が、主に肉筆画による大型美人画を描き、独特な流派を形成しました。度辰もその中の代表的人物です。

作風の特徴

大柄で堂々とした女性像
度辰の美人画は、典型的な懐月堂派のスタイルを踏襲しており、八頭身以上に引き伸ばされたプロポーションと、堂々たる姿態が特徴です。
繊細な筆致と豪華な装飾
衣装の模様には緻密な文様が施され、描線は力強くかつ優美で、動きの中に静けさを漂わせます。
理想化された美人像
現実の女性というより、理想化された優雅な美の象徴としての女性が描かれており、感情の動きはあまり表情には出しません。
肉筆画中心
懐月堂派の多くの絵師と同様に、度辰も木版画ではなく肉筆浮世絵(手描きによる一点もの)を主に制作していました。現存する作品も、肉筆画が中心です。
現存する作品と資料

度辰の作品は、今日では数点のみが知られていますが、その一部は以下の美術館に所蔵されています。

東京国立博物館
サントリー美術館
出光美術館
ボストン美術館(海外)
作品例としては、「立姿美人図」や「遊女図」などが知られ、いずれも懐月堂派の典型的な構図と、上質な画技を伝えています。

懐月堂派との関係

懐月堂派は、もともと中国絵画(特に宋・元の人物画)を参考に、日本的な感性で大胆に再構成したスタイルを特徴とします。懐月堂安度を中心に、度辰、度賀、度正、度信らが活動し、江戸初期の新しい美人画様式を確立しました。

懐月堂派の活動は、比較的短命に終わったものの、その影響は後の浮世絵美人画、特に鈴木春信や鳥居清長らにも間接的に及んでいます。

死後の評価

度辰自身の記録は極めて少なく、門弟や家族に関する情報もほとんど残っていません。しかし、作品の質から見て、懐月堂派の中でもかなり技量の高い絵師であったと推測されています。

特に、彼の描く美人図は、単なる流派の模倣にとどまらず、構図や線に独自の工夫を加えており、「懐月堂派のなかでも格調の高い作家」と評されることもあります。

まとめ

江戸時代中期の懐月堂派の浮世絵師
大型で堂々とした肉筆美人画を得意とした
現存作は少ないが、いずれも質が高く評価される
実像(生涯や詳しい人柄)は謎に包まれている